【F.A.G】バラクーダ⑳

「ちょ…!ちょっと待つのね!!待って!!教える!!教えるから離すのねッ!!」

豚足みたいな両脚をバタつかせるモリソバを解放してやると、奴は首元を擦りながら呼吸を整えた後、ごくりと一度、喉を鳴らして話し始めた。

「私が知っている訳じゃないのね。知っている可能性がある男に心当たりがあるだけよ」

「十分だ。それで?誰なんだよそいつは」

「それは…」

「…おい、ちょっと待て」

モリソバが答えようとすると、丈威が掌をかざして割って入ってきた。

「もう一つ、問題があんぜ。奴らの居場所がわかったとして、あのポトロって奴をどうすっと?俺ぁまたあんなバケモンの相手をすんのはゴメンたい。いや、あいつ一人じゃねえ。俺ら三人で乗り込むとして、奴ら、もっと大人数で待ち構えてるかもしれんぜ?」

「いや!待って!なんで私も数に入ってるのね!?」

「確かに、丈威の言う通りだ。あのゴリラ野郎をどうするか…」

抗議を無視して俺達二人が無言で考え込むと、モリソバは諦めたかのように首を振って、見るからに不服そうなツラで口を開いた。

「…私が知っている男なら、それもまとめて解決できるかも知れないのね」

「ん?どういうことや、オッサン」

丈威と俺はシンクロして首を傾げた。

「さっきも言ったけど、あくまで『可能性』の話よ。あの男が他人の頼みを素直に聞くとは思えないのね」

ここまでのいざこざを一気にまとめて吐き出すかのように、モリソバは特大のため息をついた。











【バラクーダ】了