【F.A.G】パリサイド①
首根っこを掴んで裏口から放り出すと、糞餓鬼は間抜けな声を上げてアスファルトの上に転がった。
起き上がって逃げ出そうとするが、アルコール(と何かしら)のせいでなかなか上手くいかず、結局半分這いずるような形でノロノロとその場を離れていく。
別にこれ以上何もするつもりはない。ゆっくりと帰ればいいさ。
暫くその様子を見守った後、俺は扉を開けて中へと戻った。
背中越しに喚き声が聞こえる。きっと中指の一つでも立てているんだろう。
好きなだけ恨めよ。それすらも俺の砂粒みたいなお給料に含まれてるんだ。
【第二章 パリサイド】
ハウスから客が引き、ある程度仕事が一段落すると、俺は隅に備え付けられたバー・カウンターに腰を下ろした。
その様子を見て、カウンター越しのイサキは半透明のジョッキを手に持つと、サーバーから琥珀色の液体を注ぎ入れ、無言で俺の前に差し出した。
俺はそれを受け取ると、小さく弾けている泡に口をつけて、胃の中に流し込んでゆく。
薄いビール。いつもと変わらない味。此処で働き始めて半年ほど経つが、こいつの不味さにはなかなか慣れない。
一気に飲み干してジョッキを置く。ため息混じりの欠伸が漏れる。ここ最近ずっとこんな調子だ。