【F.A.G】パリサイド⑤

傾いた木製ベッド。ヤニと焦げ目まみれのテーブル。
安物の合皮のソファは、あちらこちらで詰め物がコンニチワしている。
隅っこのひび割れたブラウン管は、この前道端でスカウトしてきた新入りだ。

膝下くらいの高さの冷蔵庫からビールを取り出し、ソファに尻を投げる。
テーブルの上で干からびて瀕死状態のジャーキーは、多分昨日か一昨日の生き残りだが、まあ無いよりはマシだろう。

テレビの電源を入れると、小さな枠の中でバカなフリしたタレントが、日本全国の本チャンのバカ共に向けてバカみてぇな『トレンド』とやらを提供していた。
くだらねぇ。が、BGMには調度いいかもな。

そんなこんなでいつも通り、時の流れを鼻クソみたいに扱ってると、知らぬ間に缶の中身は空っぽのスッカラカンだ。
小便をしてベッドまで移動しようかとも考えたが、脇に放っ散らかしてあった上着を被って寝転がると、途端に色々と億劫になってきた。

最後の力を振り絞ってテレビの電源を落とし、電球の光を避けるようにソファに顔を埋める。
そうすると、ゴミ溜めみたいなこの部屋と現実は闇の中に全部溶けて消えて、同時に俺の意識もどこか遠くへ旅立ち始めた。