【F.A.G】バラクーダ①

ダニの交通渋滞みたいなベッドで目を醒ますと、丈威(ジョーイ)はまだテレビ画面に釘付けだった。

難聴待ったなしの爆音の海の中、ヤツは時たま『ウォッ!』だとか『クソッ!』だとか『死ね!』だとか唸りながら、ご自慢のドレッドヘアーをユサユサ揺らしてアサルトライフルをゴキゲンにブッパなしている。

喉がヒリつく。埃をそのまま詰め込まれたみたいな違和感。ここで昼寝するといつもこうだ。

いつの間にかケツの下に移動したスマホをほじくり出すと、待ち受けのデジタル時計は午後四時過ぎを表示していた。

つまり俺の隣で上裸(ジョーラ)のまま胡座を掻いているこの男は、都合三時間もコントローラーを握りしめ、海の向こうの同じようなバカ共とドンパチを繰り広げている事になる。

「…おいジョー」

返事はない。恐らく耳クソを放置しすぎているせいだ。

「ジョーッ!」

二度目の呼びかけも無反応なのを確認すると、俺は三度目の代わりに丸テーブルの上のリモコンを手に取り、テレビの電源をオフにした。

「あああァァーーッ!!!」

丈威は弾けるように立ち上がり、ぶっ壊れたサイレンみたいな雄叫びを上げると、そのまま口あんぐりのバカ面で一時停止した。











「ぶはッ」

俺はその様子が可笑しくてつい吹き出してしまった。

「あッ!マキオ!テメェふざけんなよッ!」

丈威はコトを理解すると、右手のリモコンを奪い取ろうとこちら目掛けてルチャ・リブレばりのダイブをかました。

「バカッ!おい、やめろって!」

俺は必死に身をよじったが、ヤツのバカでかい図体を避けられる訳がない。
結局はこのクソ汚いベッドの上で、先程のオンラインゲームに続く二次大戦が野郎(ヤロー)二人により勃発した。