【F.A.G】バラクーダ③
「……まん」
「何て言ったと?ペコ」
「…もう二度と酒飲まん」
「何回おんなしコト言いよるんやお前。脳ミソも一緒にゲロしてきたんか?」
肩を揺らして笑う丈威。ペコは小声で『うるせー、馬鹿』と呟くと、足元に転がっているペットボトルを手に取り、中の水を一気に飲み干した。ちなみにそれは俺の飲みさしだ。
「あ、俺家の窓閉め忘れたかも。…いや、閉めたっけかな?どっちだろ」
ペコは地球上で誰一人興味のない独り言を呟くと、持っていた空のペットボトルを部屋の隅に放り投げた。
2DKから成るこのアパートは俺たちの事務所兼丈威の自宅なのだが、このノータリンゲロクソ虫は巨大なゴミ箱も兼任していると思っているらしい。
まあ間違いではない。
「ちゅーか、さすがにそろそろ時間やばくない?モリソバのオッサン怒っとるやろ」
と丈威。言葉とは裏腹に赤マルに火をつけて煙の輪っかを練習中だ。
「わかってんならさっさと準備しろや。ドつき回されても知らねぇからな」
かくいう俺もベッドの中で二度目の睡魔と死闘中。
「え、ウソぉ!まだ大丈夫じゃないの?入り何時だっけマキオ?」
ペコは間抜けな声を上げた。何処から見つけてきたのか、ポテトチップスを袋のまま貪り食っている。
お前気分悪いんじゃなかったのかよ。
「五時。スタートが六時」
「え!?今は?」
「五時半」
「クソじゃん、俺ら」
「違ぇねぇ!!ダッハッハッハ!!」
丈威が笑う。オモチャみたいに足をバタつかせながら。
「うへへッ」
ペコが笑う。ポテチ飛ばすなよ汚ぇな。
「バーカ」
俺も笑う。全くどうしようもねぇな。
まあ結局俺が言いたいのは、コイツらはブッ飛ぶほどバカでイカれた屁コキ虫のゲロ野郎で、俺の友達だって事。
【第一章 バラクーダ】