【F.A.G】バラクーダ⑲
「まずいな…」
考えうる最悪の答えだった。いや、モリソバの話を聞く前から、本当は薄々感づいてはいた。自らその可能性に目を背けていたのだろう。
だがいずれにせよ確かなのは、今こうしている間にもペコの身が窮地に追いやられているということだ。
「…で?どーすんだよ。このまま指咥えてチンタラ待ってりゃペコが帰って来んのか?」
いつの間に目覚めたのか、丈威はまるで俺の心を見透かしたようにベッドの上から話しかけてきた。
「死ぬぜ?あいつ」
「んなこと絶対させねぇよ。でも…」
俺は頭を抱えた。
「無理だ。奴らの居場所(ヤサ)なんて誰も知らねぇ。そこらの下っぱ捕まえたってゲロしねぇだろうし、街中全部探してたらキリがない」
俺の言葉に、さすがの丈威も枕に顔を埋めると、ダンマリを決めこんでしまった。
「…無いわけじゃないのね」
沈黙の中、モリソバが唐突に口を開いた。
「あンだって!?」
丈威がやや不機嫌な口調で返す。
「方法よ。無いわけじゃないのね…。でも…そうね…やっぱりこれは良くないのね。奴らに逆らうのはどう考えても良くないのね。巻き込まれるのは目に見えてるもの。結局のところ…」
「訳わからんことゴタゴタ抜かすなや!あるんか!?方法が!!」
丈威が語気を強める。
「手掛かりがあんのか!?頼むよオッサン!教えてくれ!」
俺達は二人揃ってモリソバの胸ぐらを掴み上げた。