【F.A.G】バラクーダ⑭

「訳のわからんことばっか抜かしやがって!ペコになんする気や!?クソ野郎!!」

俺の位置から辛うじて分かる程度だか、丈威の体は震えている。

「喋るな、ゴミ。お前には何も説明する義理はない。大人しくそこでマスでもカいていろ。混血野郎(ざっしゅ)」

ポトロはペコの方に視線を向けたまま言い放つと、唇に人差し指を立てる仕草をした。

「テメェ!!!!」

瞬間、丈威は雄叫びを上げると、ポトロ目がけて勢いよく飛び掛かった。

「やれやれ、暴力は嫌いと言ったろう」

ポトロは丈威の渾身の右ストレートを軽くかわすと、逆にがら空きになった奴の顔面にハンマーのような拳を叩き込んだ。

「ぐおッ!!」

丈威はトラックと激突でもしたかの様に盛大に吹き飛ぶと、後ろの壁に顔面から叩きつけられ、そのままピクリとも動かなくなった。

「これだから馬鹿は嫌なんだ。…ん?」

ペコの方に向き直ったポトロは、何かに気付いたのか、視線を下に落とした。

見ると、ペコの左手が奴の胸ぐらを掴み上げていた。

「こ、この野郎…許さねぇ…絶対に許さねぇッ…」

ペコは恐怖で全身を硬直させながらも、自分よりも頭ひとつほど大きな男に向かって鋭い視線を浴びせている。

「お前もか。あまり手を焼かせるなよ」

ポトロは埃でも払うかの様にペコの手を振りほどくと、鳩尾に膝を蹴り込んだ。

ペコは一瞬で脚の骨を抜き取られた様に、吐息一つ立てずにその場に崩れ落ちた。