【F.A.G】バラクーダ⑪

「あーぁ、俺もペコくらい女にモテたかね。なぁマキオ?」

「へーへー分かったから。さっさと用意して帰んぞ。あの女(ブス)がポン刀持ってカチこんで来る前にな」

「あはッ、確かに!」

丈威が再び少年の様な顔で笑う。

ペコも流石に弄られ慣れたのか、もう負けたよ、って具合に肩を揺らした。












渇いた音が響いたのは、俺達がクソにもならねぇ話を終えて、さあそろそろ部屋を出ようかという時だった。

コン、コン、と扉が二度、落ち着いたトーンで叩かれた。









一瞬、部屋の中が静まり返る。
俺は先ほどの女の顔を思い出した。

丈威とペコを見る。二人とも、柄にもない真剣な面持ちで俺の顔を見返した。

まさかな、なんて気持ちで、それでも数秒だけ躊躇して、俺は扉の前に向かった。









扉の上部には磨りガラスが嵌め込まれているが、そこからは外の様子は殆ど見えない。

内心少しビビりながら、意を決してドアノブを回し、扉を開けると、そこには『壁』が立っていた。