【F.A.G】バラクーダ⑦
地面を舐めた経験は何度もあったが、これほど寝覚めが悪いのは生まれて初めてのことだった。
頭が割れる様に痛い。まるで内側から金槌で殴り続けられてるみたいだ。
鉄の味が口に広がり、あり得ないほど熱を持っているのがわかる。
融通のきかない両腕を無理矢理動かし、何とか身体を起こすと、脇腹に電流が走った。
「グウゥッ」
思わず呻き声が漏れる。
違和感を感じ、口の中のものを吐き出すと、血反吐と一緒に奥歯が二本、コンクリートの床に音を立てて転がった。
まだ少し朦朧とする意識を叩き起こし、辺りを見渡す。見慣れた風景の中で、パイプ椅子や長机がガキのおもちゃみたいに散乱している。どうやらF.A.Gの控え室らしい。
ふと右側の壁を見ると、ある『もの』が目に飛び込んできた。
巨大なボロ雑巾に見えたそれは、よく見ると人の形をしている。
丈威だ。
壁にもたれ掛かるようにして倒れているヤツの頭からは血が流れ出ていて、顔の半分ほどを覆っている。
一瞬、死んでいるのかと思ったが、微かに上下する胸元が見え、取り敢えず一安心する。お互いひどい有り様には違いないが。
さらによく部屋の中を観察すると、あることに気づいた。
ペコがいない。
ペコ…
そうだ、ペコだ。
依然、鈍痛が響く俺の頭は徐々に回転を始め、先程までのクソッタレな記憶を呼び起こそうとしていた。